スイスはおかれた自然環境から、乳製品以外の食料はほとんど輸入に頼るしかない。歴史的に周辺諸国に依存せざるを得ず、他国同士の利害によっては軍事だけではなく、食料問題においてもたちまち危機に陥ることになる。ゆえに永世中立国という選択には合理性があると思われる。
食料生産資源のメンテナンスを怠り、食料輸入増加に突き進んできた日本の選択は正しい道だったのだろうか? 日本の食料問題は、農業問題としてひとくくりできるような単純なものではない。実態は農業外問題、外交問題であり政治の問題なのである。本書は、その根幹が日本の対米従属関係に由来しているためではないかと思う。
アメリカの対日農業戦略
それにしても、どうしてこうも日本の供給システムは縮んでしまったのだろうか?
そこにはアメリカに逆らえない日本政府の事情があった。
第2次大戦後の日米の歴史を振り返ると、余剰農産物の処理に困っていたアメリカは、日本をアメリカ産小麦の販売市場として固定化することに成功する。その結果、日本産小麦はほぼ未来永劫にアメリカに敗北し続ける羽目になったのだ。
アメリカによる戦後の対日復興政策ともからんで日本の人口は増え、1950年代から始まった高度経済成長もあって、アメリカからすれば食料を十分に買い続けられるはずだとの期待が生まれてしまった。