妊娠中は、妊娠を継続するために、体内でエストロゲンが安定してつくられています。それが、出産を経てエストロゲンはほぼゼロに近くなり、生理が戻ってくるまでそのままの状態が続きます。これは、閉経後とほぼ同じ状態といえます。産後の女性の10%が産後うつになると言われているにもかかわらず、PMSや更年期障害と比べて、十分に知られているとはいえません。本人ですら「そういえばあのときは理由もないのに泣いてばかりいたな」と思い出すぐらいで、困っているまさにそのときには、なかなか気づけないものなのです。
更年期のこころの不調と同じように、産後のこころの不調に関しても、軽くすることをあきらめなくていいのです。我慢して時間がすぎるのを待つのではなく、自分なりのケアや対策を探していただきたいですし、産婦人科医を頼ってみてください。
このように、生理前と更年期は、女性のこころの不調の理由になりうることが広く認知されるようになりましたし、対策方法も確立されてきました。一方で、産後のこころの不調が大きな課題として取り上げられるようになったのはここ数年であり、まだまだ対策の余地がありますし、もっと広く認知されていく必要がある分野だと考えています。
(構成/長瀬千雅、ブックデザイン/鈴木千佳子)