徳川家康の入封までは、関東の港町に過ぎなかった江戸。家康以降のインフラ整備と拡張については、10月15日に公開した記事【徳川家康は街づくりプロデューサー「江戸と行徳」を運河で結んだ理由とは】で詳報した。その後、「百万都市」と呼ばれるまでに発展した江戸は、教育水準が高く、リサイクルにおいても現代の先を行く先端都市だったことが知られている。
オンライン予備校で「日本一生徒数の多い社会講師」として活躍する伊藤賀一氏が監修した『テーマ別だから政治も文化もつかめる 江戸時代』(かみゆ歴史編集部編)は、江戸の人々の成熟した生活様式を伝える中で、リサイクル事情にも触れている。江戸の人々の徹底した「5R」ライフについて、この本からリポートしたい。
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「5R」とは、ゴミを減らすために推奨される「Reduce(ごみを出さない)」「Reuse(繰り返し使う)」「Recycle(資源として再利用する)」「Refuse(ゴミになるものを断る)」「Repair(修理して使う)」の頭文字。江戸の日常生活が、この5Rの手本になる。
江戸の日常は「5R」が根付く、見事な「リサイクル社会」だった。
布製品なら服を古着屋で買う習慣があり、ほころびができたらあて布をして長く着ていた。少ない衣類を大切に着まわす習慣があった。子どものサイズに仕立て直したり、掃除に使ったり。最後は火を焚く材料になり、残った灰さえも染料や肥料になった。
調味料や酒は陶器や樽などの再利用できる容器に入れてやりとりされ、履物も傘も壊れた物は極力修理した。つまり経済的な価値がある限り利用したということ。価値をビジネスに転換する商才も、それを実現できる職人技もあったのだ。
ただし、こうした明るい側面ばかりとはいかない。「夢の島」の始まりは江戸時代にあったことをご存じだろうか。都市のインフラ整備が進むなか、開府から50年余りで早くもゴミ処理問題は深刻化していた。