2020東京オリンピック開会式(写真:松尾/アフロスポーツ)
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 哲学者の東浩紀氏が、現代社会を生きる術を記した著書『訂正する力』(朝日新書)を刊行した。同書から一部抜粋、再編集し、東氏が考える昨今のキャンセルカルチャーについて紹介する。

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ポリティカル・コレクティングと言うべき

 ポリティカル・コレクトネス(PC)という言葉を最近よく耳にします。「政治的な正しさ」という意味で、ジェンダーに配慮して議員の比率を変えようとか、バリアフリーに配慮して建物の設計を変えようとか、そういう動きのことです。

 それ自体はいいことですが、ポリティカル・コレクトネスという言葉はしばしば社会的攻撃の名目にも使われています。このひとは正しくない発言をした、だからみんなで批判しよう、仕事を奪おうというものです。そういう動きは「キャンセルカルチャー」と呼ばれたりします。

 近年の有名な例は東京五輪の開会式です。ミュージシャンの小山田圭吾さんは開会式で楽曲を担当する予定でしたが、学生時代のいじめについて語っていた1990年代なかばの雑誌記事が掘り返され、ネットで拡散されました。五輪の理念に反していると問題になり、直前で降板に追い込まれました。

 ぼくはこのキャンセルそのものを否定するつもりはありません。小山田さんの雑誌内での発言はたしかにひどかった。

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訂正する力は記憶する力でもある