スマホのせいで、勉強や仕事のパフォーマンスが下がったと思う人は多い。もちろんネガティブな部分もゼロではないが、「スマホは悪い」と短絡的に考えてしまってはもったいないと説くのは、アメリカでもトップレベルの教育が受けられるスタンフォード大学が運営するオンラインハイスクールの校長で、哲学博士の星友啓氏だ。スマホの登場以来、さまざまな角度による多面的な研究が行われ、ポジティブな部分も大いに見つかってきている。星氏の新著『脳を活かすスマホ術――スタンフォード哲学博士が教える知的活用法』(朝日新書)から一部抜粋、再編集し、紹介する。
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すべてがスマホのせいなのか
近年、「スマホは悪い!」のテーマで世界的なベストセラー本も生まれていますが、だいぶ以前からスマホのネガティブな面を指し示す論文を発表していた脳科学者や教育者たちがいました。
そうした研究に注目した学者や医者、研究者のグループが、「スマホは体に悪い!」という声明を出したことがありました。
これが、あたかも科学的に決着のついた真実かのように取り上げられてしまったのです。メディアも反応して「スマホはコントロールしないとダメだ」というムーブメントが多方面から湧き起こり、いわゆるネガティブキャンペーンが形づくられていきました。
一方で、その「スマホは体に悪い!」声明から数日後、「その内容はおかしい」という反対派の声明だって発表されていたのです。「良い結果を示す研究もあり、さらに研究が必要だ」「まだ少ない特定の研究結果から一般化し過ぎてはいけない」といった反論です。