病気とのつきあいが長くなってきたら

 発症から10年、15年、あるいはそれ以上経過すると、治療では症状をコントロールし切れなくなり、介助が必要な時間が増えてきます。その際には、障害者総合支援制度、介護保険制度などのサービスの利用を検討しましょう。申請し認定を受けると、ホームヘルパーが自宅を訪問するサービス、福祉用具のレンタルなどさまざまなサービスを費用の一部を自己負担することで利用できます。医療費を軽減する難病医療費助成制度、税金の障害者控除などを受けられる身体障害者手帳の制度もありますから、事前に対象や申請方法などを調べておくとよいでしょう。

 病気が進行した時に気をつけてほしいのは、感染症、誤嚥(ごえん)性肺炎、大きな骨折です。体に大きな炎症が起こると、いったんパーキンソン病の症状が悪化し、もとの病気である感染症などが治癒しても、前の状態にまで戻らないことがあるからです。予防接種や十分な栄養摂取、いつも口腔をきれいに保つことで感染症を防ぎ、住まいの環境整備や歩行補助具で転倒・骨折を防ぐようにします。

 介護が必要になると、人によっては介護施設への入所を選択することもあります。その場合の問題点について、大山医師は次のように言います。

「施設に入所し訪問診療を受ける場合、訪問診療医がパーキンソン病に詳しくないと薬の調整がなされないままになることがあり、施設においても脳神経内科医の診察を受けられる環境づくりが求められています。当院は介護施設と連携する取り組みをおこなっており、そういった施設を探すのも一つの方法です」

 パーキンソン病になっても、寿命はパーキンソン病ではない人と大きな差はありません。まずは過度に恐れず、早めにきちんと治療を受け、よい状態をできるだけ長く保つこと。介護が必要になった時には、パーキンソン病に限りませんが、医師や看護師、介護職などによるサポートを積極的に活用していきましょう。

(文/山本七枝子)

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