パーキンソン病は、糖尿病などの生活習慣病と同様に「生涯つきあう病気」で、治療では自分に合った薬を使って、体の動きをうまく調節できなくなる「運動症状」をコントロールしていきます。長く服用していると薬の効く時間が短くなるなどしますが、その場合は薬を調整することで、できるだけ生活に支障が生じないようにすることが大切です。治療や病気との上手な向き合い方などについて、パーキンソン病を専門とする脳神経内科の医師に聞きました。この記事は、週刊朝日ムック「手術数でわかるいい病院」編集チームが取材する連載企画「名医に聞く 病気の予防と治し方」からお届けします。「パーキンソン病」全3回の3回目です。
【図表】パーキンソン病患者が取り組みたい8つの生活習慣はこちら
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パーキンソン病の運動症状には薬物療法の効果が高く、早期のうちは症状を抑えられるので、仕事を続けるなど通常の生活を送ることが可能です。ところが薬物療法を長く続けるうち、「運動合併症」が起こるようになります。
その一つが「ウェアリングオフ現象」です。薬の効く時間が短くなり、薬が効く「オン」の時間帯には問題なく動けるのに、効果が弱まる「オフ」の時間帯になると、手足がふるえる、動作が遅くなる、歩こうとしても足が動かないなどの運動症状が出てきます。もう一つは、自分の意思とは関係なく体が動いてしまう「不随意運動(ジスキネジア)」です。これは薬の効きすぎによるもので、手足や肩がくねくね動く、体が揺れる、口もとが動くなどが起こります。
専門医の少ない地域での医療相談にも取り組む国立病院機構宇多野病院臨床研究部長の大江田知子医師は、「パーキンソン病の進み方は個人差が大きい」といいます。
「薬がよく効き、日常活動におおむね支障なく過ごせる期間は『ハネムーン期』と呼ばれます。ハネムーン期は3~10年ぐらいと人によりさまざまです。やがて多くの患者さんに『運動合併症』がみられるようになり、薬の用量や服薬のタイミングなどを見直して症状をコントロールしていきます」(大江田医師)
ドパミンを補充する薬を中心とするテーラーメイド治療
パーキンソン病では、脳内の神経伝達物質の一種である「ドパミン」が減っているので、それを補うため、脳内でドパミンに変化する「L-ドパ製剤」がよく使われます。ドパミンを受け取る部分「ドパミン受容体」を刺激して情報伝達を促す「ドパミンアゴニスト」もよく使われます。