経済対策というと、やみくもにお金を使うことだけ考える人が多いが、現在のように需給バランスが取れている状況では、真に緊急を要する予算を増やす一方で、そうでないものを先送りするという歳出削減も併せて行う必要があるのだ。

 前置きが長くなったが、ここから万博の話に戻ろう。

 現在、需給ギャップが概ねゼロというのは経済全体の話だが、実は、建設土木分野では、以前から、明らかに需要超過の状態が続いている。資材価格も上がり、人手不足も深刻だ。このため、マンションも戸建て住宅も建設コストが上がり、家を買いたいという庶民にはとても手が出ない状況になっている。店舗や工場建設のコストも同様だ。

 こんなときに、開幕に間に合わないのは確実と言われる万博のパビリオンの建設を何が何でも間に合わせようということになればどうなるか。当然、全国から業者や労働者を集めて突貫工事になる。そうすると、例えば、本で進んでいるTSMCの巨大工場建設や札幌で進むラピダスの工場建設などの工事との競争になり、ただでさえ高い工事費用は天井知らずに上がる可能性が極めて高い。住宅建設にも、また、民間のその他の工場や店舗などの建設にも影響は波及する。

 住宅価格が上がれば売れ行きにブレーキがかかり、また、庶民は住宅をますます買えなくなる。設備投資を先延ばししたり規模を縮小したりする企業も増えるだろう。これはもちろん、日本経済全体にとってマイナスだ。

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万博をやめれば日本のためになる