今回は、そうした批判に加えて、さらに別の視点からみても大阪・関西万博は直ちに中止すべきだということを指摘したい。

 本題に入る前に、「需給ギャップ」が最近ニュースになっているのをご存じだろうか。

 今、自民党では、20兆円規模の補正予算が必要だという声が高まっている。そんなお金はないので、また国債を発行して借金を膨らませるということだ。

 不景気で国民の生活が困窮しているとき、その原因が、国全体の供給力に比べて需要の方が足りなくて、モノやサービスが売れないということなら、需要を増やさなければならない。そのために政府が意図的に公共事業などの支出を増やして需要を創出することで景気を浮揚するということが正当化される。

 これを少し抽象化すると、需要から供給を差し引いた「需給ギャップ」がマイナスなら、国による財政出動が正当化されるという考え方になる。

 日本の需給ギャップは、長いことマイナスが続き、不景気が続いてきたと言われる。そこで、政府が補正予算などを組んで需要不足を解消するということが正当化されてきた。その結果、財政赤字が拡大し、公的債務も1200兆円にまで膨らんだのだ。 

 しかし、最近になって、この需給ギャップがほぼ解消したというデータが、内閣府からも日銀からも発表され、ニュースになった。

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需要喚起すると、物価はあがり、人手も不足する