イギリスのスナク首相

 10月4日、イギリスのスナク首相はHS2(ハイスピード2)と呼ばれる次世代高速鉄道計画の縮小を発表した。当初は、最高時速360キロでロンドンからバーミンガムへ、さらに西側はマンチェスター、東側はリーズなどまでを結ぶ壮大な計画だった。

 スナク首相は、建設コストの上昇などを理由にバーミンガム以北の路線全ての建設中止を決めた。削減予算は6兆5000億円。これを北部や中部などの新しい交通プロジェクトに充てるという。北部地域活性化の最大の目玉であり、国の威信をかけて進めていたHS2の建設を途中でやめるというのは、日本で言えば、東北北部、北陸、上越などの新幹線計画をやめたというのに等しいインパクトだ。

 大阪・関西万博と比べると政治姿勢の違いが際立つ。特に、イギリスでは総選挙が近づいていて、これだけの大型プロジェクトを途中で半分程度にまで縮小するという決断は、相当勇気のいることだ。

 日本では、貰えるものは何でも貰おうと国民が考えるのに対して、イギリスでは、無駄なものは造らずもっと意味のあるものに使って欲しいという賢い国民が多いのだろう。

 そう考えると、大阪の住民、そして日本の国民の民度が問われているのかもしれない。

 10月11日には、札幌市と日本オリンピック委員会が2030年の冬季五輪招致を断念するという発表を行った。34年以降の招致は諦めていないようだが、背景に市民の理解が得られないということがある。そういう意味では、日本にも少しは希望があるのかなと思える話だ。

 大阪でも、これに続いて、万博、そしてカジノまで、「やめる」という勇気ある決断を住民が後押しすることを期待したい。

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