前の説明から分かるとおり、需給ギャップがゼロなら、ここで需要を人為的に追加すると、需要超過になるということを意味する。

 需要超過になれば、ただでさえ上がっている物価はさらに上がる。人手不足も加速する。その結果、例えば、公共事業予算1000億円を補正予算で1100億円に増やしても、物価が上がり、また人手不足が加速して、結局追加した100億円分は資材費と人件費の上昇分に消えて、建設できるものは元々予定していたものと変わらないということが起きる。増えるのは国の借金100億円だけだ。

 そして、インフレが加速すれば、国民生活はさらに苦しくなる。つまり、補正予算はない方が良かったということになるわけだ。

 では、需給ギャップがゼロの場合、補正予算は一切不要なのかというとそうでもない。

 例えば、災害で壊れたインフラを造り直す予算は追加する必要がある。また物価高で苦しむ人がいれば、それが限度を超えているという人だけを対象に支援のための措置を実施することも必要だ。

 しかし、需要全体を増やすのは望ましくないので、不要不急の公共事業は先送りし、それによって需給バランスを保ち、不要な物価上昇を避けることができる。借金の拡大も生じない。

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日本経済全体にとってマイナスばかり