日本には約3000カ所の温泉地があり、その数は世界でもトップとされる。東の熱海や草津、西の別府や有馬など、「誰もが知る温泉地」は枚挙にいとまがない。温泉に行こう!と思った瞬間から気持ちは和みはじめ、ひとたび体を沈めれば、命まで再生される気分。歴史上の偉人たちも同様の感覚を抱いていたようで、戦国武将から日本を代表する文豪、明治の元勲まで、偉人と古湯のかかわりは数々の歴史書にも記されている。

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 発売されたばかりの『日本 旅大事典1500』は、Book in Book「心の赴くままに、テーマで巡る ニッポン!諸国漫遊旅」の中で、多くの人に愛される歴史ある古湯を、ゆかりある人物や書物などとひもづけて紹介している。そのいくつかを紹介したい。

源 頼朝 ✖ 草津温泉

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源頼朝が狩りの途中に訪れた由緒正しき白濁湯
源頼朝(1147-1199年)が狩りの途中に草津を訪れ、入湯したと伝えられ、いまも「頼朝宮」と呼ばれる石造りの祠(ほこら)が残る。江戸時代の温泉番付では、東の大関として当時の最高位。草津温泉のシンボル「湯畑」や「湯もみ」も見逃せない。

豊臣秀吉 ✖ 有馬温泉

豊臣秀吉が繰り返し当時に通った日本最古の名湯
豊臣秀吉(1537-1598年)が湯治のため9度も通ったとされる、日本最古の名湯。長い戦で疲れた心身を癒やしたのだろうか。療養泉として指定される成分が7つも含まれているのが特徴で、これは世界的にも珍しい。

徳川家康 ✖ 熱海温泉

写真提供・熱海市

徳川家康が天下を取る前に訪れた「出世の湯」
徳川家康(1542-1616年)が、関ケ原の合戦前に入湯することで、力を温存し、天下統一を成し遂げたという伝説が残る。家族で湯治に訪れた記録も残っている。もともとは「熱い海」を意味する「あたみ」。東京からも新幹線で約50分という好立地で、首都圏からの日帰り旅行の目的地としても人気。

西郷隆盛 ✖ 指宿温泉

西郷隆盛が疲れを癒やしたリフレッシュの湯
群を抜く温泉好きだったと言われる西郷隆盛(1827-1877年)。その西郷が、健康維持のために通ったとされるのが指宿温泉だ。海を望める温泉も多くあり、リフレッシュには最適。海岸に温泉が湧出し、温められた砂に入浴できる砂むし温泉も有名だ。

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明治の元勲が通った温泉宿