元首相の襲撃を機に噴き出した「旧統一教会」問題は、新たな局面を迎える。「遅きに失した」との声もあるが、解散命令請求で被害者の救済は進むのか。AERA 2023年10月2日号より。
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世界平和統一家庭連合(旧統一教会)は、安倍晋三元首相の銃撃事件直後は強気だった。新世事件を機に「コンプライアンス宣言」を出したとし、「当法人を相手取った民事訴訟の数は着実に減少」と主張。教団関係者も当時について、
「自分たちは(解散命令を)出されない。大丈夫だという認識が内部では強かった」
と話す。過去に解散命令が出た宗教法人として当初判明していたのはわずか2件(オウム真理教、明覚寺。実際は大日山法華経寺を加えた3件)で、いずれも幹部が刑事事件で摘発されていることもよりどころにしていたという。
だが、銃撃事件から3カ月後の22年10月17日、衆院予算委員会で、岸田文雄首相は「教団の組織的な不法行為責任を認めた民事裁判の例がある」ことを理由に、質問権の行使を進める考えを表明。つまり、民事でも解散命令請求の根拠にする方針が示されたのだ。「全国霊感商法対策弁護士連絡会」(全国弁連)事務局の阿部克臣弁護士も、
「オウム真理教に対する高裁判決は、解散命令を出す理由を刑法違反に限定していない。教団の法解釈と主張には無理がある」
とし、解散命令が出る可能性は限りなく高いとする。ある現職の国会議員は、政府内の動きをこう説明する。
「当初から解散命令請求は念頭にあり、そのステップとして質問権の行使があるという認識だった。質問権の行使は前例がなく、慎重に進める必要があったので、1年はかかるだろうと。担当部署の人員を何倍にも増やし、粛々と進めてきた」
500項目以上の質問
教団と深い付き合いのある議員が次々と明らかになった自民党内では、
「事の成り行きを、離れたところから見守るという姿勢を取る議員が大半だった」(現職国会議員)
反対する声は大きくならず、一方の教団内では、それまでにはなかった焦りと危機感が急速に広がった。