青柳は入団後、制球難に苦しんだが首脳陣は我慢強く起用した。向上心旺盛で、目の前の課題を一つ一つクリアする。フィールディングもワンバウンドで送球するなど修正し、変化球も年を重ねる度に多彩になり、精度が高まった。21、22年と2年連続最多勝に輝くなど球界を代表する投手に。青柳の努力はもちろんだが、投手の育成能力が高い阪神に入団したことも、大輪の花を咲かせた大きな要因だろう。
下位指名で言えば、侍ジャパンでWBC制覇に貢献した中野拓夢は、ドラフト6位で入団している。「遊撃の守備範囲が広いが、肩が強いとは言えず堅守とも言えない。打撃も抜きん出ているようには見えなかった」(パリーグ編成担当)という評価だったが、プロ1年目に盗塁王を獲得するなど、攻守でチームに不可欠な選手に。打撃も広角に安打を打ち分けるだけでなく、外野の間を射抜くパンチ力がある。岡田彰布監督の方針で遊撃から二塁にコンバートされた今季は、自身初の最多安打を狙える好位置につけている。
中野が入団したドラフトは、1位・佐藤輝明、2位・伊藤将司、5位・村上頌樹、8位・石井大智とプロで活躍する選手たちがそろう。今季大ブレークした村上は智弁学園で3年春にエースとして全5試合を投げ抜き、同校初の全国制覇に導くなどアマチュア球界を代表する右腕だったが、上位指名ではなかった。その理由について、スポーツ紙デスクが明かす。
「村上は東洋大でもエースとして活躍していましたが、4年秋に右前腕の肉離れで戦列を離れたことが影響しましたね。まとまった投球フォームで制球力も良いのですが、球速が速いわけではないので、今後の伸びしろに疑問を感じる球団もありました。この時は矢野燿大前監督の評価が高かったことが、指名を決断する後押しになりました」