「会場の阪神ファンから『佐々木を単独指名で獲得できたのに…』という空気が流れていました。1位指名とはいえ、大山はこの雰囲気にショックを受けたことは想像に難くない。ただ、阪神の判断は間違っていなかったことが、その後の活躍で証明されています。大山は20年に岡本和真(巨人)と熾烈なタイトル争いを繰り広げて28本塁打をマークするなど和製大砲として活躍し、今年も全試合4番でスタメン出場して優勝に大きく貢献しました。大山指名は当時の金本監督の強い希望だったと言われていますが、英断と言えるでしょう」(前出のスポーツ紙記者)
同じく1位指名の近本は、他球団から「3位で獲得できる選手」という評価が少なくなかった。社会人野球を代表する外野手だったが、肩が弱いことがネックとされていた。19年のドラフトでは根尾昂(中日)、藤原恭大(ロッテ)、小園海斗(広島)に1位指名が集中する中、阪神は藤原を指名。抽選で外れると、辰己涼介を「外れ1位」で指名するが再び抽選で外れた。「外れ外れ1位」で指名したのが近本だった。プロ入り後の活躍は周知の通りだ。プロ1年目から中堅のレギュラーをつかみ、3度の盗塁王を獲得。21年に最多安打を受賞している。ゴールデングラブ賞も2度受賞。肩が強いとは言えないが、捕球してから正確な送球に定評があり、新人の19年にリーグトップの10補殺を記録している。
15年ドラフト5位で入団した青柳も、他球団の評価が決して高い選手ではなかった。他球団のスカウトが明かす。
「変則的なフォームからの力強い直球は魅力だったが、制球が悪くフィールディング能力も高くなかった。大卒のルーキーは即戦力が欲しい中で、ちょっと厳しいかなと。プロで活路を見出すとすれば中継ぎかなと思いましたが、まさかプロ入り後にあんな活躍をするとは想像できなかった」