「もし子育てをするなら、楽しんで学べる工夫をしたいですね」と廣津留さん(撮影/吉松伸太郎)

 今の子どもたちへのメッセージとしては、小中学生のうちに1人でもいいから気が合う友達を見つけて大事にし続けてほしいです。私は今も小中学校で仲の良かった人たちに会うと、バイオリニストやコメンテーターとしての「廣津留すみれ」じゃなくて、当時の感覚で話してくれるからすごく安心するし、ありがたいなと思います。そういう何の肩書きもない自分を知っている、初心に帰れるような友達がいることはとても大事だと思います。

 子どもの勉強については、楽しくなるような工夫をしてあげたいですね。「勉強が終わったらご褒美があるよ」とか。私がいまもそうなんで(笑)。「この仕事が終わったら、ビールを飲みながら好きなドラマが見られるよ」なんて自分に言い聞かせています。また、ちょっとしたクイズを出すなど、学んでいることが日常生活と自然に結びつけられるような形にして興味関心を持ってもらえるといいなと思います。教科書は大人が読むと学び直しになって面白そうなので、親も一緒に読んで楽しんでいる姿を見せると、子どもも興味を持つかもしれませんね。

Q. 大分市教育委員も務める廣津留さん。いまの初等教育の現場を見ていて、どんな変化を感じますか。

A. コロナ禍の影響で、小学生でも1人1台学習用端末を持つ学校が一気に増えたこともあって、いまの教科書は基本的にQRコードが付いているんですよね。QRを読み込むと動画などの関連する情報が見られるようになっている。英語の発音などはそういうデジタルコンテンツが有効だと思うんですが、それが全ての教科となると情報量が多すぎて先生も子どもたちも必要なものを取捨選択するのが難しいところがあるんじゃないかなと思います。真面目な子は、全部のQRコードを読み込んで見なくちゃいけないと思ってしまうかもしれない。

 デジタルコンテンツは上手に使えばスピードを出して学べると思いますが、自分の苦手なところだけを見てみるなど、何かルールを決める必要はありますよね。そういう判断に頭を使いそうで、紙の教科書の時代とは違った大変さがありそうです。デジタルを取り入れた教育はまだ初期段階ですし、先生にも子どもたちにもITリテラシー(情報技術を使いこなす能力)が問われているのだと思います。

構成/岩本恵美 衣装協力/BEAMS

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