ただ、課題もある。
日本国内の嫌中感情の高まりによって、二階氏が訪問するような対応は「中国に対して弱腰だ」と受け取られ、内閣支持率の低下などに結びつきかねないからだ。
「中国の行動は、日本の世論を嫌中に向けてしまいました。それが日本の対中政策の手足を縛ることになる。そこに中国は気づくべきだ、いや、すでに気づいていると思います。
究極的には中国指導部が処理水放出批判は逆効果だと理解して、静かに批判をフェードアウトさせる可能性はあるでしょう」
問われる習近平政権の判断
長年成長を続けてきた中国の経済は現在、大きな曲がり角にある。全土で開発が進められてきた不動産の価格が下落し、その影響は金融セクターを蝕もうとしている。
「これだけ悪化した中国経済を立て直すためには、安定した国際環境が必要だ、という認識が中国指導部のなかで主流となっていくのか否か。今回の対日批判のゆくえは、この地域の『中国の核心的利益』をめぐる今後の中国の安全保障政策の方向性を判断するうえで注目すべき非常に大きなイシューだと思います」
中国にとってマイナス面が大きい、処理水放出に対する批判。静かに拳を下ろすのか、それとも、「やはり中国は異質な国だ」と国際社会に認識される道を選ぶのか。習近平政権の判断が注目される。
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)