防衛省防衛研究所・地域研究部中国研究室の飯田将史室長(本人提供)

認知戦が目指すもの

 中国が「認知戦」を仕掛ける、その狙いはなにか。飯田さんはその一つが、「日本国内の分断」だと見る。

 処理水を海洋放出する岸田文雄政権の政策に対しては、一部の政党や政治家、国民には強硬な反対意見がある。そして処理水の海洋放出を受けて、中国政府は日本産の水産物の全面的な禁輸措置を取り、中国政府の情報を信じた中国の市民は東京電力や福島県内の公共機関、一般の店舗などに「怒り」の電話をかけ始めた。今のところ中国政府に、そのような国内の動きを積極的に止めようという気配は見られない。

「中国は日本政府に対する反対意見をサポートすることで、日本国内の意見の違いを拡大させようとしている。政府与党に対する批判の一つのアイテムである処理水放出問題を燃え上がらせることで、与野党対立をあおろうとしているわけです」
 

 「分断」の試みは、海外でも展開されている。

 韓国では処理水放出に対し、尹錫悦政権は理解を示しているものの、国民からは懸念の声が上がっている。中韓外相は8月末に電話会談したが、中国側の発表では処理水放出についても協議したとしている。また、中国は7月にインドネシア・ジャカルタで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)の関連会合でも、処理水問題をたびたび持ち出したという。
 

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状況は思惑通りに進んでいない