――公募があったんですか?

 はい。指導教員だった舟木直久(ふなき・ただひさ)先生から「出してみませんか」と言われました。就職直後は、さっきまで学生だったのに、いきなり教室の前に立つことになって「何をすればいいんでしょう」みたいな感じだったんですけど、前任の先生がすごく親切で、いろいろ教えてくださったので何とかなりました。

女子生徒に情報が届くように発信したら

――それで、「数理女子」は?

 ああ、そうそう、慶応で出会った坂内健一(ばんない・けんいち)さんと2013年ぐらいにおしゃべりをしていて、坂内さんも数学分野の女性が少ないと感じていて、私に「どういうことができると思いますか」と聞いてくれた。私は女子学院というキリスト教系の女子校出身なのですが、数学好きはあまりいなかった。数楽班っていう、ほかの学校でいえば数学研究会みたいな部活に入ったんですけど、ほとんどおしゃべりしている集まりでした。大学に入って男の子たちを見ていたら、中学高校時代から数学好きの仲間がいて、こういう本が面白いとか、数学科ってこんなところ、といった情報がいっぱい入ってきていたんだろうなという感じがして、女子生徒にもそういう情報が届くように発信したらいいんじゃないかなと伝えました。親御さんが数学科への進学を心配するということも聞いていたので、親御さんへの情報発信という意図もありました。

 そうしたら、次の日に坂内さんが「作りました」って。

――え!

 後から聞いたら、どんな案がきてもいいようにいろいろと準備をしてくださっていたそうです。三角と丸だけでできた、こびとさんみたいな愛らしいキャラクターはいたのですが、ウェブページとしては簡易的な、本当にリンク集みたいな感じでした。名前は全然深く考えずに「数理女子」とつけました。

 だいぶ長いことその姿のままだったんですけれど、高校時代の友達に見せたら「これのどこが女子向けなの?」って(笑)。でも、こっちもデザインのプロでもないし、時間もないしと思っていた。それで東大に移った最初の年に、自由に使わせてもらえる資金があったんです。正直、数学って物はそんなに買わない。それでふと、「数理女子」のページをちゃんとプロに作ってもらったらいいと思いついた。当時の研究科長に相談したらOKが出たので、プロのデザイナーにお願いして、コンセプトなど時間をかけて話し合って、今のウェブページができました。

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