研究科の定例会議は、着任した年は午後4時50分開始で、7時とか8時までかかることもあった。保育園のお迎えに間に合わないと途中で抜けていたのですが、次の年から3時開始になった。たぶん、私が来る前から開始時刻を早めようと議論があったんだと思います。さらに今年から1時半開始になりました。
「数理なんでも相談コーナー」を始めたきっかけ
――それは素晴らしい。
私が数学科に進学したとき、同級生45人のうち女子は私1人で、上下の学年は女子ゼロでした。やっぱり超少数派の女性として居心地が悪いと思うことはありましたし、教員になったあと女子学生から気になる話を聞くことも何度もあった。それで、問題があると思うことはその時々の研究科長に話してきました。
例えば院生室は男女一緒なんですけれど、男子はそこで平気で着替えをする。私自身、院生のときに困って、トイレで着替えたりしていた。女性特有の体調不良とかもありますし、当時の研究科長に言ったら鍵がかかる女性の部屋をすぐに作ってくれました。
教員公募の書類に「有期雇用のポストでも産休・育休がとれる」「産休・育休の期間があることは評価の際に考慮される」などを明記することを提案したら、それはすぐに書いてもらえました。
あとは、私個人としてということではなく、研究科全体でいろいろな議論があって、2020年に「ハラスメントのない数理、数学科を」という宣言文ができました。どのセミナー室にも貼ってあります。「属性にかかわらず、個人として尊重されることは基本的価値」とし、ハラスメントは「この基本的価値を損なうもの」と位置付け、それを防ぐための対策を講じます、と宣言するものです。
それで、具体的に何ができるか、ということを皆さんで話し合って、「数理なんでも相談コーナー」というのも始めました。大学全体の学生相談所はもちろんあるんですけれど、学生としては数理科学研究科の先生に聞いてほしいという思いもあると思うので、ウェブ上で匿名でも相談を申し込めるフォームを作りました。教員5人が担当しています。
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