研究室の黒板の前に立つ佐々田槙子さん=2023年8月、東京大学駒場キャンパスにある数理科学研究科

「数理女子」というウェブページ(http://www.suri-joshi.jp/)がある。副題は「数学の魅力をたくさんの女子へ」。その生みの親・育ての親の一人が東京大学大学院数理科学研究科准教授の佐々田槙子さん(38)だ。数学界にいる人たちがジェンダーや社会の問題について気軽に語れるオンライン談話会の世話人もしている。「日本のほとんどの数学者って、数学の話以外、誰がどこの大学に移ったっていうような話しかしない」と以前感じ、できるところから働きかけを始めた。東大数学科卒、既婚、2児あり。日本を変えるチャレンジを果敢に続ける佐々田さんに聞いた。(聞き手・構成/科学ジャーナリスト・高橋真理子)

【写真】どこが女子向け?からガラリと変わったウェブページ

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――「おいでMath談話会」という名前のオンライン談話会を月に1度開催しているそうですね。

 研究者だけでなく、大学院生や学部生も大歓迎の会です。前半は、数学者が自分の専門分野の面白さを他分野の院生にもわかるように話します。後半は同じ講演者に広い意味でのダイバーシティー(多様性)やインクルージョン(包摂、すべての人が個性を尊重され能力を発揮できること)に関連する個人的な経験を話してもらい、そのあと少人数に分かれてディスカッションしてもらう。2年ぐらい前から月1回やっています。

――ご自身が発案されたんですか?

 沖縄科学技術大学院大学(OIST)のある女性数学者の方が、米国で経験した談話会は話が専門外の人にもわかりやすく、学生たちもいっぱい集まってすごく盛り上がっていたのに、日本に来たらそうした場があまりないと感じられたことがきっかけでした。ちょうどコロナの時期だったので、全国規模で談話会をオンライン開催しようということになり、私は企画の途中で誘ってもらって5人の世話人のうちの1人になりました。

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高橋真理子

高橋真理子

高橋真理子(たかはし・まりこ)/ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネータ―。1956年生まれ。東京大学理学部物理学科卒。40年余勤めた朝日新聞ではほぼ一貫して科学技術や医療の報道に関わった。著書に『重力波発見! 新しい天文学の扉を開く黄金のカギ』(新潮選書)など

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博士課程を2年で出て、慶応大学の助教に