古賀茂明氏

 木原誠二官房副長官の刑事事件捜査介入疑惑に関する大手メディアの報道に大きな違和感を持つのは私だけだろうか。

【写真】「爺殺し」と言われている政治家はこの人

 この疑惑は、「週刊文春」7月13日号が独占スクープした。木原氏の妻が元夫の不審死事件に関して重要参考人として事情聴取や家宅捜索を受けていたことや木原氏が捜査に介入した疑いがあることを報じたものだ。

 当初は大手メディアの全社が完全無視した。

 文春は、捜査を担当し木原夫人を直接取り調べた元警察官の「事件性あり」とする詳しい証言を続報したが、警視庁が「本件は事件性がない」とし、警察庁長官もこれを追認する発言をして火消しに回った。文春は、元警察官の記者会見まで行って追い打ちをかけたが、警察はもちろんのこと、大手メディアは一貫して本件を大きく取り上げない姿勢を貫いている。

 2006年のこの「殺人」事件については、当初、木原夫人の元夫の自殺とされたが、18年になって警視庁内で疑わしい点があるということで本格的な再捜査が始まった。しかし、その8カ月後に突然捜査が終了させられたというのだ。その際、木原氏が政治家として影響力を行使したのではないかというのが文春の見立てである。

 木原氏の妻が木原氏と結婚する前に重要参考人として警察の取り調べを受けていたこと自体は、木原氏の落ち度ではない。しかし、結婚後の18年に、事件のことを知って、警察に対して何らかの政治的圧力をかけていたという文春の報道が真実なら大問題だ。岸田文雄首相の最側近で、日本の政治の舵取りに大きな影響を与える立場にある木原氏にそうした過去があるということになれば、違法行為でなくても、岸田政権の信頼性に直接打撃を与えるのは必至である。

著者プロフィールを見る
古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

古賀茂明の記事一覧はこちら
次のページ
なぜ報道が少ないのか