しかし、菅氏が自分でそこまでやるとも考えにくい。菅氏の総理再登板を願う安倍・菅政権の残党が動いている可能性の方が高いかもしれない……
などと思いを巡らせていると、文春の8月31日号(8月23日発売)に驚くような記事が出た。それは、岸田政権で木原氏と並び官房副長官を務める元警察庁長官の栗生俊一氏が、露木康浩警察庁長官に「どうにかしてやれよ」と発破をかけ、それを受けて露木氏が「火消しをしろ」(木原事件を事件性なしでうまく収めろという趣旨)と重松弘教警視庁刑事部長に命じたというスクープだ。これが事実なら、この事件は、木原氏の過去における捜査への政治介入疑惑から、現政権による警察捜査への直接の政治介入というはるかに深刻な疑惑に「格上げ」となる。
これほどの機密情報がいとも簡単に漏れるのはなぜか。文春報道の裏には、OBも含めて警察官僚組織の中でかなりの権力を持つ者がいると見た方が良いだろう。そして、栗生氏と安倍・菅政権の最有力官僚の一人であった元警察幹部官僚の北村滋元内閣情報官とは対立関係にあるとの報道もある。
やはり、今回の騒動の裏には、岸田政権と対立する政治勢力の動きがあるとしか私には思えない。それは、18年の捜査ストップの真相については情報を流さず、闇の中に閉じ込めておきたい勢力でもあるということだ。
ここまで長々と書いたが、結局核心部分の答えは不明のままだ。
ただ、はっきり言えるのは、木原事件は、「木原事件」で終わらせるのではなく、もっと深い闇から漏れ出してきた真相に導く端緒として扱わなければならないということである。
隠れた真の悪人は誰かを暴くのがメディアの責任だが、それを大手メディアの記者たちに期待するのはしょせん無理なことなのだろうか。