木原官房副長官

 もちろん、本件を報道すれば国民も大きな関心を持つはずだ。報道機関なら追加取材をして、文春報道の真偽を確認し、また木原氏はもちろん岸田首相や谷公一国家公安委員長などの政府の責任者に厳しく説明を求めるべきである。

 しかし、依然として、新聞やテレビの腰は不思議なほど重い。

 そこで今回はまず、この事件についてなぜこれほど報道がなされないのかということについて考えてみたい。

 メディアの側から見ると、報道を抑制する二つの要素がある。

 その第一が警察との関係だ。これは主に社会部の問題になる。そこには報道を止める四つの事情がある。

  1. 警察は、「本件には事件性がない」と公に宣言し、警察の記者クラブの記者にも非常に強く伝えている。それなのに、無理して取材したり、大きな記事にすると、警察の機嫌を損ね、他の案件で取材がしにくくなる。最悪の場合は、自社だけが重要な情報を教えてもらえず、いわゆる「特落ち」するリスクもある。それを恐れて記者もデスクも無理をしたがらない。
  2. 警察が動かない以上、深追いしても結局は立件されずニュースにできない可能性が高い。時間の無駄だ。それなら、最初からやめて他のことをやろうという心理が働く。
  3. 大手メディア、特に新聞社は経済的に苦しく、取材費がない。また優秀な記者の退社も相次ぎ、人手も足りない。取材する十分なリソースがないのだ。無駄に終わるかもしれない取材に人も金も注ぎ込むわけにはいかないということになる。
  4. 警察が動かず立件もされないのに、木原氏やその関係者を追及する記事を書くと、名誉毀損などで訴訟沙汰になり敗訴のリスクがあるので、無理はしないという判断になる。
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当時、木原氏は大きな権力はもっていなかった