社内人脈を通じて収集した情報をつなぎ合わせたようで、同期の男性に「刺された」のが真実かどうかは調べようもない。だが、長年の取材で彼の人物像を見てきた者として、彼がマタハラを行っていないという主張に嘘偽りがないことだけは確かだと思う。
「パパ活」の落とし穴
「左遷人事」を機に、定時にきっぱりと仕事を切り上げ、帰宅まで街をさまよう「フラリーマン」生活が始まった。そのことを知るのは、音信不通の時期を経て、2021年にようやく取材に応じてくれた時だった。
やつれた顔をした49歳の北山さんは、苦しい胸の内を明かした。
「3年ほどは会社を出てから、スナックのママに話を聞いてもらい、嫌な毎日を憂さ晴らししていたんですが、コロナ禍で酒を扱う飲食店の休業、時短営業などが相次いで、そうもいかなくなって……。それで、そのー……若い女の子に食事とかに付き合ってもらってお金を払う“パパ活”とかいうやつにはまってしまって……とんだ災難でした……」
コロナ禍でスナックが休業している時に初めてネットで知り合った女性と飲食をともにしてお金を払ったことをきっかけに、スナックが再開した後も、月に2、3回の頻度で“パパ活”にお金をつぎ込んでしまったのだという。半年ほどで妻にバレたためにやめたが、それから妻との会話はほとんどないらしい。