訴えられた内容は、妊娠中に軽易な仕事への転換を希望したものの認められず、育休期間の短縮を強制された、というものだった。

 北山さん自身は事実無根の訴えであると反論したが退けられ、けん責の懲戒処分を受けたという。彼によると、マタハラで訴えた部下の女性はキャリア志向が強く、人事考課前の面談などではいつも、過剰な配慮は職務経験を積んで実績を上げ、昇進していくために悪影響なので望まない、という意向だった。そのため、妊娠中も本人が希望しなかったため、軽易な職務への転換を行わなかったし、育休も希望通りの期間にしただけだったという。

 このマタハラの訴えが事実認定され、懲戒処分を受けたことにより、人事部長昇進はなくなり、人事部から総務部に実質的に部下のいない部次長待遇の役職で異動となった。

 翌18年、インタビューに応じ、それまで見せたことのないような険しい目つきで、衝撃的な言葉を口にした。

「私は同期の男に刺されたんです……」

「いったい、どういうことなんでしょうか?」

「私を訴えた女性部下は、かつて私がリストラを言い渡した社員の娘でした。そして、実質的な左遷人事を下したのは、私の同期の男。その男が案の定、私が就くはずだった人事部の部長ポストを手にしたんです。つまり、奴が前から私を恨んでいた彼女をけしかけて嘘の訴えをさせたのに違いないんです。こんなことで勝者から敗者に転落するなんて……」

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「パパ活」の落とし穴