高血圧と診断された患者の半数が医療機関を受診しておらず、さらに受診した人でもしっかり治療をして目標値まで血圧を下げられた人は、その半数といわれます。つまり、高血圧の人の約4分の3が血圧を適切にコントロールできていない、それが日本の現状なのです。一方、高血圧は早く治療するほどコントロールしやすく、休薬や断薬が可能になることもあるといわれます。「自覚症状がなくても早期治療」を合言葉にできるよう、週刊朝日ムック「手術数でわかるいい病院」編集チームが取材する連載企画「名医に聞く 病気の予防と治し方」からお届けします。「高血圧」全3回の3回目です。
【図版】病院では緊張で血圧が高くなりやすい! 「診察室血圧」と「家庭血圧」の基準
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■支える家族のためにも積極的な治療を
高血圧の人の多くは自覚症状がなく、一見、とても元気です。しかし、放置すると動脈硬化が進み、ある日突然、重い病気を起こすことがあります。
兵庫県尼崎市で、日々多くの患者の診療にあたる勝谷医院院長の勝谷友宏医師は、「これらの病気は患者さんだけでなく、ご家族の生活も一変させてしまう」と話します。
勝谷医師は、大阪大学で20年間、高血圧やアルツハイマー病などの診療と研究に携わってきました。父の後を継いで同院院長となり、病気の治療から予防、介護の相談など幅広く地域の人々の健康をサポートしながら、現在も千里金蘭大学や大阪医科薬科大学で教鞭を執っています。また、日本高血圧学会理事として、高血圧に関する研究に携わるなど治療の進歩や医療連携などにも貢献しています。
「高血圧が引き起こす病気は、脳卒中(脳梗塞・脳出血)や心筋梗塞などで、運よく命が助かっても半身不随や寝たきりなど、要介護状態になるリスクも高い。ある日突然、人の手を借りなければ何もできなくなってしまうのです。『元気なのになぜ治療しなきゃいけないのか』『もう年だから何があってもいい』という患者さんもいますが、『あなたはよくても、ご家族の生活はどうなると思いますか』と話します」(勝谷医師)