「例えば、体内に塩分や水分がたまっていると、本来は血圧が下がる夜間も血圧を上げて体外に排出しようとするため、夜も朝も、ずっと血圧が高い状態が続くのです」(同)

 このようなタイプは、心臓や血管にかかる負担が大きく、脳卒中や心筋梗塞などのリスクがより高くなるため、早期治療が必要になり、治療により血圧をどこまで下げるかという目標(降圧目標)も厳しくなります。

「高血圧治療ガイドライン2019」では、75歳未満の成人の降圧目標が診察室血圧で130/80mmHg未満なのに対し、75歳以上の高齢者は140/90mmHg未満と、少しゆるく設定されています。高齢になるとさまざまな病気を持つ人が多く、体調や体力に個人差が大きいこと、血圧の変動が起こりやすいことなどにより、一概に降圧の基準を定めることが難しくなるためです。

 ただし、高齢でも血圧が高い人はしっかり下げる必要があることに変わりはありません。「高齢者は基準をゆるくしていい」と一概にいうものではなく、一人ひとりの患者に適切な降圧目標を、医師と相談して設定することが必要です。

 高血圧の治療に使われる薬は、近年、種類が増えており、それぞれで血圧を下げるしくみが異なります。

「血管拡張薬」とよばれる、血管を広げることで血液の流れをよくして降圧する薬では、「ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)」「ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)」「カルシウム拮抗薬」などがあります。

 また、腎臓でのナトリウムの再吸収を抑えることで尿量を増やし、体内の血液量を減らす「利尿薬」もよく使われます。

 ほかに、心臓の負担を減らすことで血圧を下げる「β遮断薬」。ナトリウムの再吸収を防ぐなどして降圧する「選択的アルドステロン拮抗薬」、血管拡張作用や利尿作用などがある「ARNI(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)」などが使用されることもあります。

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薬は一生飲み続けなければならないは誤り