高血圧はほとんど自覚症状がないため、多くは健康診断で見つかります。血圧の基準には、病院で測る「診察室血圧」と、自宅で測る「家庭血圧」があり、病院では緊張などにより血圧が高くなりやすいため(白衣高血圧)、家庭血圧のほうでは低い基準が用いられます。

 日本高血圧学会が定める基準では、診察室血圧の最高血圧が140mmHg以上、かつ/または最低血圧が90mmHg以上、家庭血圧の最高血圧が135mmHg以上、かつ/または最低血圧が85mmHg以上で高血圧と診断します。

 佐賀大学病院副病院長・循環器内科主任教授の野出孝一医師は、「健康診断などで血圧値がこの基準以上だったら、自覚症状がなくても受診してほしい」と話します。

 野出医師は、大学病院で長年にわたり循環器病の診療や研究に携わり、2022年には日本高血圧学会の理事長に就任。同学会が展開する「高血圧の国民を10年間で700万人減少し健康寿命を延ばす」プロジェクトを牽引し、高血圧の予防や早期治療のための啓発にも積極的に取り組んでいます。

 高血圧と診断されたら、血圧値と患者の年齢、ほかの病気の有無、家族歴などにより、治療を始めるタイミングや治療目標を検討します。

「一般的に、140mmHgぐらいであれば、まずは生活指導をおこないます。食事などでの生活改善を試みながら1、2カ月様子をみて、改善しない場合は薬物療法を開始します。ただし、糖尿病などの合併症がある人や、家族に高血圧や脳卒中になった人がいる場合などは、すぐに治療を開始します」(勝谷医師)

■「夜間高血圧」や「早朝高血圧」にも注意

 本来、血圧は夜寝ているときがいちばん低く、朝起きてから数時間が最も高くなります。しかし、夜も高い「夜間高血圧」や、朝でも正常の範囲を超えて血圧が上がる「早朝高血圧」と呼ばれるタイプもあり、腎臓病や糖尿病、肥満、睡眠時無呼吸症候群の人などに起こりやすいといわれます。

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体内に塩分や水分がたまっていると血圧が高い状態が続く