「高血圧の原因や合併症などにより、例えば、塩分過多の人なら利尿薬、血管が収縮している人ならカルシウム拮抗薬、心不全を合併している人ならARBやACE阻害薬にβ遮断薬も検討するなど、それぞれの患者さんに適した薬剤を選択します」(野出医師)

■治療で高血圧が改善すれば、薬を一生飲み続ける必要はない

 多くの人が「高血圧の薬は一生飲み続けなければならない」と思うようですが、「それは誤り」と両医師は口をそろえます。治療により高血圧が改善すれば、薬を減らすことも、やめることも十分に可能だといいます。

「症状の改善については個人差がありますが、明確なのは、早く治療を始めたほうが治る可能性は高いということ。高血圧に長期間さらされると血管は硬くなり、戻らなくなります。血管のしなやかさが失われる前に、早く治療することで改善し、薬を飲まずに生活できるようになることもあります」(勝谷医師)

 受診する場合は、「まずは内科のかかりつけ医への受診でいい」と両医師は話します。

「持病があってかかりつけ医にみてもらいながら、一緒に血圧の管理・治療をしてもらっている人は大勢います。近くてすぐに行ける、何かあれば気軽に相談できるなど、信頼できるかかりつけ医がいることが大事です。必要があれば、より高血圧の治療に詳しい専門医に紹介してもらえるでしょう」(勝谷医師)

 降圧薬の進歩が著しい一方で、高血圧患者のうち、きちんと降圧目標までコントロールできている患者は約27%といわれています。

「高血圧患者の半分は病院を受診しておらず、受診してもその半分の人はしっかり治療できていないのが現状です。これらの患者さんの血圧を降圧目標まで下げることができれば、脳卒中は2~3割減少するともいわれています」(同)

 そのためにも、勝谷医師は「生活習慣の是正と降圧剤による治療を両輪に、社会全体で高血圧の予防・治療に取り組むことが大事」といいます。

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国を挙げて減塩政策を実践し、成功したのがイギリス