渡瀬謙(わたせ・けん)/サイレントセールストレーナー/ピクトワークス社長。最新刊『静かな営業』(PHP研究所)が7月20日に刊行予定(写真:本人提供)
渡瀬謙(わたせ・けん)/サイレントセールストレーナー/ピクトワークス社長。最新刊『静かな営業』(PHP研究所)が7月20日に刊行予定(写真:本人提供)

 渡瀬さんに「静かな営業」のポイントを伝授してもらった。カギは雑談だ。「雑談の目的は笑わせたり、盛り上げたりすることではなく、初対面のお客さんの警戒心を解くことです」(同)


 要は相手にたくさんしゃべってもらう。そのためには話題のタネをまく必要がある。「内向型はアドリブが苦手ですから仕込みが重要。相手の身近な話題を探してぶつけるのが基本です」(同)


 駅からオフィスまでの道のりは「話のネタの宝庫」だ。例えば、訪問先の会社に向かう道すがら、行列を作っているラーメン店があれば店名をメモし、営業相手に「おいしいんですか」と話題を振ってみる。相手が乗ってくれば、「何がおすすめですか」と尋ねる。「味噌がうまい」と教えてもらったとしたら、帰りに寄って食べてみる。帰社後、「今日はありがとうございました」とメールを送る際、「あの後、さっそく味噌ラーメンを食べました。絶品でした。今度行った時にまた食べたいです」と一筆添えておく。対面で雑談した2人にしか分からない共通の話題が距離を縮めてくれる、というわけだ。


 質問にもコツがある。過去、現在、未来の順に聞く。商品が求人広告だとしたら、「今まで御社は求人広告を使ったことがありますか」とまず過去を聞く。以前使っていたのであれば、「今も継続して使っているんですか」と現在について尋ねる。「今はもうやめた」と言われたら、なぜやめたのか理由を尋ねる。「変化を見つけて、その理由を聞き出す」のがポイントだ。過去の求人広告で効果を得られなかったのであれば、それがどんな広告だったか教えてもらい、その要因を自分なりに分析し、相手に伝える。その上で、自社が扱う広告の利点を相手に伝え、「試してみませんか」と未来をきりだす。


 内向型の人は「自分を正確に知るのが大事」だと渡瀬さんは言う。


「『口下手』や『あがり症』といったネガティブに見られがちな特性も受け入れ、自分で発信できる状態まで持っていければ、すごくラクになります。最近はTwitterのプロフィール欄に『内向型です』と書く人も増えています。今の時代、『自分の弱みもさらけ出せる強い人』と評価されるのではないでしょうか」


 生まれつき苦手なことについては、「できない」と切り捨てる潔さも必要だと渡瀬さんは説く。


「しゃべるのが苦手だったら、話し上手になる練習なんかしない。笑顔が苦手だったら、無理に笑顔なんて作らなくていい。頑張って努力してもせいぜい平均止まりです。そこに時間と労力をかけるのではなく、自分が好きで得意な分野を伸ばすことに注力した方がいい。自分の中でそのジャッジができる人は強い」


(編集部・渡辺豪)

AERA 2023年7月17日号に加筆

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