仕事に対して向上心を持つことは良いことだが、行き過ぎるとメンタル不調のきっかけになることもある。早稲田大学スポーツ科学学術院教授で精神科医の西多昌規さんは、「仕事の価値観だけでなく、自分の価値観を持つことが大切」という。西多さん監修の『やめてもいいこと86 心の疲れをとる事典』(朝日新聞出版)から、メンタル不調のきっかけになりやすい3つの悪いこだわりを紹介する。
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「大企業=安定」はすでに過去の話。就職先は、自分はどんな働き方がしたいのかを軸に決めましょう。
「安定していて待遇が良い」「親が安心する」など、終身雇用が当たり前だった時代には大企業に勤めることがステータスでした。しかし、昔に比べ働き方の選択肢が広がるようになったいま、終身雇用制度は徐々に崩壊し、大企業に入社しても失職しないという保証はなく、残念ながら生涯の安定は望めません。
加えて、従業員数が多い会社に入社すると、やりがいを求めて入社しても、自分が希望していない仕事に配属される可能性も大いにあります。規模の大小を問わず、就職活動の際に抱く企業のイメージとその現実には隔たりがあるのです。
その理由はさまざまですが、たとえ会社が大きくて盤石な経営体制でも、人間関係によって自分自身が潰れてしまうというケースもあります。
もしもいま就職や転職を考えているのであれば「なんとなく大企業が安定していそうだから」という理由ではなく、自分の価値観に合わせて働く先も考えていきましょう。
■「出世だけにこだわる」とキャリアの突然の終わりに対応できない
キャリアは突然終わりを告げることも。日頃から出世以外の自分の価値を大切にしましょう。
「サラリーマンになったからには出世したい。同期で一番早く中間管理職になり、部長になる。さらには執行役員になり、取締役になり、あわよくば社長にまで上りつめてやる!」 ……このように男女を問わず出世にこだわるタイプの人は、収入よりも「社会的地位」を求め、自分が周囲からの尊敬を集めることに充実を感じます。