しかし、出世レースに勝ち続けているうちはいいのですが、本人の努力とは裏腹にコロナ禍のような予期せぬ事態による不況などによって、突然キャリアを失うこともあります。出世欲が強い人ほど、名刺の肩書やポジションを失くしたときの喪失感は計り知れず、それをきっかけにうつ病など心身の不調を招くことも珍しくありません。

  そうならないためには、専門的な知識や技術、仕事だけにこだわらない豊かな人間関係など、「出世軸以外の自分の価値をきちんと見い出しておくことが大切です。肩書ではなく「自分が人として大切にしていることは何か?」。それを日頃から考えておきましょう。

  会社のなかで出世を競う自分は、あくまでその人を表す一つの側面でしかありません。仮にそのレースからとり残されてしまっても、自分が必要とされる場面はいくらでもあるのです。

■「人脈つくりと無理していろんな人とつながる」のはSNS疲れの原因

イラスト/うのき
イラスト/うのき

  無理して「知り合い」を増やす必要はありません。いざというとき助けてくれるのは、リアルな人間関係を結んでいる相手。

  損得抜きにして人と付き合える学生時代と異なり、社会人になると周囲から「仕事に人脈は重要」「社内でも社外でも人脈を広げろ」などとアドバイスされることが多くなります。

しかも現代にはSNSという強力なツールがあり、一面識もない相手とも、遠く離れた海外に暮らす人とも、自宅にいながらして簡単に「知り合い」になることができます。

  しかし一方で、「いろいろな人たちと付き合うことにストレスを感じる」「SNSでいつもつながっているのは疲れる」などという人も少なくありません。もし、自分がそのように考えるのであれば、無理をしてまで人脈を広げる必要などありません。

  なぜなら、SNSを駆使して「知り合い」の数を増やしたところで、生身の人間同士としての関係は決して深まりませんし、見ず知らずの人間とつながりを持つことでトラブルに見舞われるリスクだってあるからです。

  そこで心がけてほしいのは、いざというときに人脈として力を発揮するのは、自分がリアルな人間関係を結んでいる相手だということ。数など少なくていいのです。幅も狭くていい。実際に会い、語り、自分が信頼関係を築くことができた人を大切にしていきましょう。

(構成 生活・文化編集部 端 香里)

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