※写真はイメージ(gettyimages)
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 自分の身に万が一のことがあったとき、家族に迷惑がかからないよう相続について考えておきたい。では、少しでも相続税の負担を減らすにはどうすればいのだろうか。知っておきたい節税方法を紹介する。AERA 2023年5月22日号の記事をから。

【図】「暦年贈与」とは

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 相続税の負担をできるだけ抑えたいという人や、ボーダーライン上なので非課税となるような対策を打ちたいという人も多いはずだ。そこで、いくつかの節税方法を紹介しておこう。その筆頭に挙げられるのが生前贈与だ。贈与税には年間110万円以内の非課税枠が設けられているので、存命中にそのペースで子や孫に贈与を継続的に行っていく。

 まさに節税対策の王道で、専門的には「暦年贈与」と呼ばれている。ただし、非課税枠の範囲内でも生前贈与と認められない場合もある。さらに、来年から生前贈与に関する制度改正が実施されることにも気をつけたい。

「贈与された資金は、来年から大幅に制度が拡充されるNISA(少額投資非課税制度)口座で運用するのも一考です。そうすれば、年間360万円までの投資で得られた利益に対して所得税がかかりません」(税理士法人チェスター東京本店代表・河合厚さん)

 生前贈与については、その目的が子どもや孫(18歳以上)のマイホーム購入なら、「住宅取得等資金の贈与税の特例」を活用したい。なぜなら、省エネ等住宅の場合であれば1千万円まで贈与しても課税されないからだ(23年12月31日までの贈与が対象)。

AERA 2023年5月22日号より
AERA 2023年5月22日号より

■評価額低い不動産

 一方、自宅が立つ土地を配偶者が相続するなら、「小規模宅地等の特例」という制度に注目。この特例を適用できれば、土地の評価額を地価に対して最大80%も引き下げられ、大幅に節税できる。ただし、どんな土地でも対象となるわけではなく、細かく定められた要件を満たす必要があることには要注意だ。

 そもそも不動産は、同じ価値の現金・預貯金、有価証券などと比べて、相続税を計算する際の評価額が低くなる。実際の取引価格(実勢価格)の8割程度とみなされるのだ。他人に貸すとさらに低く評価され、富裕層などが賃貸マンション・アパート経営を始めるケースが多いのもその点に目をつけてのことだ。もっとも、不向きな場所に賃貸物件を建てて空室が続くなら、赤字垂れ流しで本末転倒だろう。

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大西洋平

大西洋平

出版社勤務などを経て1995年に独立し、フリーのジャーナリストとして「AERA」「週刊ダイヤモンド」、「プレジデント」、などの一般雑誌で執筆中。識者・著名人や上場企業トップのインタビューも多数手掛け、金融・経済からエレクトロニクス、メカトロニクス、IT、エンタメ、再生可能エネルギー、さらには介護まで、幅広い領域で取材活動を行っている。

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