最近、大変興味深い研究が発表されました。ネズミを使った実験ですが、ネズミもオスのほうがテストステロンの分泌量は多い。これは哺乳類だけではなく、爬虫類も同じです。ところが、ネズミを生まれた時から無菌状態で飼育すると、テストステロンの分泌量は雌雄変わらなくなるというのです。私たちは大腸菌や乳酸菌などさまざまな常在菌と共生しています。つまり、この研究が意味しているのは、テストステロンの分泌には腸内細菌が必要だということなのです。腸内環境を整えて免疫を高めることが大事なのです。

――日本人と欧米人とでは、テストステロンの分泌量に違いはありますか。

 アジア人は基本的にテストステロンの分泌量が欧米人より低い傾向にあります。だから、周囲と協調できるのという説もあります。特に日本人は、空気を読みます。空気とは何かと言ったら、他人の評価であり、それに同調することです。テストステロンが高い人は、概して他人の評価など気にしません。中国の古典『孟子』に書いてある「千万人と雖も我往かん」の精神です。

――人の視線など気にせず、自由に生きたほうが楽しい、ということですね。

 そう。欧米ではいかに自分を表現するか、プレゼンテーション能力を高める教育をしています。けれども、日本では習ったことを反復する教育になってしまっているでしょう。そこは根本的に文化の違いです。

 かつては60歳で定年退職、その後は隠居するというのが日本の文化でした。ところが、いま皮肉なことに、少子化の問題もあって若手の補充が追い付かなくなり、人手不足になってきました。海外から若い人材に来てもらう方法もありますが、更年期以降の世代をもう一回、元気にすることが必要なのです。テストステロンをアップすれば、若々しく長生きできます。これが一番大事だと思います。

(本誌・亀井洋志)

※週刊朝日オンライン限定記事

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