──指揮者を演じる上で、役作りにはどんな準備をしましたか?
「指揮の経験は喜びであり、とても好奇心がそそられる課題だった。指揮者が指揮について語るのを聞くだけでも驚きがあった。指揮についての記事を読んだり演奏会でのパフォーマンスを見たりもした。たとえばリハーサルは考えながら試行錯誤しているわけで、本番のパフォーマンスとはエネルギーの使い方も違う。また、指揮者個人によってスタイルや方法もそれぞれで、時代とともに変化していく。さらに招待指揮者と首席指揮者との相違も大きい。たくさんの指揮者から少しずつ学んだ。彼らの経験に焦点を当て習得し、その世界に飛び込んだ」
──スクリーンでベルリン・フィルとして登場した、ドレスデン・フィルとの協演はいかがでしたか?
「これまで一度も体験したことのないような、力強い体の動きを発見し、体感する機会になった。彼らと9カ月間を準備に費やして、メンバーの優しさや寛大さに、心から感謝している。音楽を通して、私たちの協演が可能になった。演技と演奏の中間点で私たちは出会った。それは言葉で表現できないような素晴らしい体験だった」
「楽譜を読み、指揮するということを学習する上で、そのほかにもたくさんのことを教えてもらった。指揮は沈黙の中で準備し、動きと音を感覚で覚える作業だけれど、自分の体に反射してくる音は予想もできない、初めての経験だった。指揮とは思考するのでなく、体全体で呼吸するのだと学んだ」
──ターのキャリアはSNSによる批判がきっかけで揺らいでいきます。
「有名人のスキャンダルが公になる場合、何が起こったのかという真実が明確にされないまま、人々は臆測をもとに、意見を言ったり物事を決めつけたりしてしまう。この映画でも同様のことが起こる。現代は誰もが自分の物語の主人公であると同時に、誰もがなぜ、私のことをあれほど誤解しているのか、そう思ってほしいと私が意図したことは全くないのに、と思う」