奥村は移籍5年目の19年に74試合出場。“坂本勇人2世”の流出は、坂本の後継遊撃手の育成が急務の巨人にとっても、大きな痛手だった。
16年オフに山口俊の人的補償でDeNAに移籍した平良拳太郎も、18、19年と先発で2年連続5勝を挙げ、巨大戦力の中に宝が埋まっていることを証明した。
翌17年オフに野上亮磨の人的補償で西武に移籍した高木勇人は、2年間で登板10試合とあまり活躍できなかったものの、移籍後初勝利を挙げた18年4月22日(ロッテ戦)に、巨人・野上も勝ち投手になるという、史上初のFA移籍選手と人的補償選手の同日勝利を記録した。
18年オフには、長野久義(丸佳浩の人的補償)、内海哲也(炭谷銀仁朗の人的補償)と、アマ時代に回り道してまで“巨人愛”を貫いた両ベテランの流出が、ファンに大きな衝撃を与えた。
そんなプロテクト漏れの悲劇を乗り越え、西武・内海は20年に史上56人目の通算1500奪三振を達成。広島で4年間“名脇役”を務めた長野も、今季は無償トレードで巨人に復帰した。
14人目は、20年オフに梶谷隆幸の人的補償でDeNAに移籍した田中俊太。移籍後2年間は打率1割台に終わったが、今季は結果を出したいところだ。
若手や中堅は出場機会を増やし、ベテランも若手の手本になるなど、14人の多くが移籍先でニーズに応えていることを考えると、人的補償選手はFA移籍選手以上に野球選手としての幅を広げていると言えそうだ。(文・久保田龍雄)
●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。