キャンプ前からそう語っていた高津監督は、5月7日の巨人戦(東京ドーム)で今季初の単独首位に立った際も「何とも思わないと言ったらアレですが、あんまりピンと来ないですね」と冷静に受け止め、7月2日のDeNA戦(神宮)に勝ってマジック53が点灯しても「本当にピンと来ないですね。そんな感じです」と、浮かれた様子は微塵も見せなかった。

 そうした指揮官の姿勢はナインにも浸透している。7月7日の巨人戦(東京ドーム)で今季5勝目、通算182勝目を挙げた42歳の大ベテラン、石川雅規の「シーズンもまだ半分近くありますけども、なんとか一番上を目指してですね、チーム一丸となって、1つのアウトをしっかり取って勝ち切れるように、1戦1戦頑張りたいと思います」との言葉が、それを物語る。

 もっとも、これまでヤクルトの連覇を阻んできたのは「気の緩み」だけではない。「主力のケガ」も大きな要因の1つだった。特に1990年代は、攻守の大黒柱であった正捕手・古田敦也が“無事”かどうかが、チームの命運を左右していた。

 なにしろ1992、93、95、97年と、古田が全試合に出場した年はすべて優勝。一方、開幕直後にファウルチップで右手人差し指を骨折した1994年、シーズン序盤のクロスプレーで左第十一肋軟骨損傷の1996年、開幕戦の守備で投球を右手に受けて三角繊維靭帯損傷の1998年と、ケガで戦列を離れた年はもれなく連覇を逃してBクラスに沈んでいる。

 その後の時代も含め、ヤクルトというチームはケガなくメンバーが揃ってさえいれば、良い戦いができると言われてきた。2015年はウラディミール・バレンティンが左大腿直筋の肉離れでシーズンの大半を棒に振った以外、大きなケガ人を出すことなくシーズンを乗り切り、14年ぶりのリーグ制覇。ところが翌2016年は前年の首位打者・川端慎吾、同打点王・畠山和洋(現二軍打撃コーチ)など主力に故障が相次ぎ、一気に5位に転落した。

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「高津流マネジメント」も強さの要因