主力は粒ぞろいでも選手層が薄く、控えとの力の差が激しいヤクルトは、レギュラークラスの選手が離脱すると、なかなかその穴を埋められずにいた。高津監督就任1年目の2020年も、正捕手の中村悠平が開幕から離脱するなど、戦力を整えることができずに最下位。そこで昨年の高津監督は、可能な限りケガ人を出さないようにシーズンを通して腐心した。

「シーズン通して、たぶん良かったことは、この戦力をずっと維持できたことなのかなと。その辺のコンディションの維持を、監督はすごく言ってたんで。(練習を)やりすぎないようにみたいなこととか、練習の量をちょっと減らしながらだとか、そういったことを1年間通してやってたんで、自分はその辺がうまくいって戦力を維持できたんじゃないかなというのは感じてます。その辺のマネジメント力っていうのは、やっぱりすごかったのかなと思います」

 昨年の優勝後のインタビューで、野手最年長の青木宣親はそう話している。実際、シーズン序盤に中継ぎとして投げまくった近藤弘樹を除いては、主力選手の長期の離脱はなかった。それが20年ぶりの日本一に結びついたといっても、過言ではないだろう。

 この「高津流マネジメント」は今シーズンも続いている。いや、さらに進化した印象を受ける。顕著なのはリリーフ投手の起用だ。昨年はセットアッパーの今野龍太、清水昇、抑えのスコット・マクガフと3人が60試合以上に登板。清水の72試合はリーグ最多で、マクガフは2位タイ、今野も4位にランクインしていた。彼らはいわゆる“勝利の方程式”を担う投手たちなので、ある意味当然と言っていい。

 それが今年は、ここまで30試合以上に登板しているのはマクガフだけ(31試合、リーグ9位タイ)。一方で20試合以上に投げている投手は、他に8人もいる。これはリードしている展開でも“方程式”をガチガチに固定せず、出番を上手く分散しているからだ。リリーフ投手を9人登録している場合は、その中の1人を“上がり”にしてベンチ入りメンバーから外すなど、できるだけ疲労を溜めないように配慮している。

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“穴”を感じさせない戦いぶりも