とはいえ、今年もケガ人が出ていないわけではない。開幕前に正捕手の中村が離脱すると、昨年はチーム最多タイの9勝を挙げるなどエース級の働きを見せた奥川恭伸、今季は開幕から5番に座って10試合で打率.343、4本塁打と打ちまくっていたドミンゴ・サンタナも、開幕後にコンディション不良で登録抹消となった。

 中村は5月初めに復帰したものの、それまでは古賀優大や内山壮真といった若手が代役として奮闘。左半月板のクリーニング手術を受けたサンタナの代わりには7年目の山崎晃太朗がレギュラーに定着し、奥川不在の先発投手陣では育成から支配下になったばかりの小澤怜史がプロ初勝利を挙げるなど、“穴”を感じさせないのはチーム全体の底上げが進んでいる証拠だ。

 これまでのヤクルトにとっては、とてつもなくハードルが高かった「連覇」だが、ここまで書いてきたとおり今年は状況が全く違う。現在の勝率を考えれば、5年前には96敗したチームが96勝も──とそんな期待さえ膨らむが、何が起きるか分からないのがコロナ禍のプロ野球。取材をする側の我々としても、気を緩めることなく今後の行く末を見守っていきたい。(文中敬称略。今季成績はすべて7月7日終了時点)

(文・菊田康彦)

●プロフィール
菊田康彦
1966年生まれ。静岡県出身。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身。2004~08年『スカパーMLBライブ』、16~17年『スポナビライブMLB』出演。プロ野球は10年からヤクルトの取材を続けている。

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