■島で出会った二人の少女
2~3年前、和田さんは作品をまとめようと思ったとき、アイルランドの何にいちばん引かれたのか、考えた。
「アイルランドの空って、雲が低いし、動きが速い。だから、天気の変化が激しい。晴れていたら、急に曇って、雨が降り、また日差しが戻って虹が出たりする。風景が止まってないっていうか。空の変化に時間の流れをすごく感じた。それで、作品のタイトルを『Irish skies』にしたんです」
意外なことに、ほぼ風景が占める作品のなかに二人の少女が登場する。イニシュモア島で出会ったマヤとシオナだ。
「ぼくにとってはすごい巡り合わせだったんですが、16年にこの島を訪れたとき、ビーチで遊んでいる二人を見つけて遠くからシャッターを切った。それが始まりだった。近くにシオナのお母さんがいたので、撮っていいですか、とたずねたら、いいよ、言ってくれた。それ以来、ずっと撮り続けているんです」
二人は同い年のいとこだという。
「人口800人ほどの小さな島の風景はいつ来ても何も変わらないと思っていた。でも、そこに暮らしている少女たちの成長ぶりが時間の流れを感じさせてくれる。この島がぼくとアイルランドをずっとつなげてくれた。そういう場所なんです」
さらに、和田さんは、こう続けた。
「風景って、ほとんどが偶然の出合い。だから、もう1回行けばもっといいものが撮れるんじゃないかなって思う。光だったり、雲だったり。やっぱり行くたびに違うから。次はもっと別な出合いがあるんじゃないかなっていう期待感がある。だから、これからもアイルランドを訪ねようと思うんです」
(アサヒカメラ・米倉昭仁)
【MEMO】和田直樹写真展「Irish skies-創作の泉-」
ニコンプラザ東京 THE GALLERY 7月12日~7月25日
ニコンプラザ大阪 THE GALLERY 9月1日~9月14日