今年の5月、ジュリアード時代を過ごしたニューヨークを久しぶりに訪れた廣津留さん(廣津留さん提供)
今年の5月、ジュリアード時代を過ごしたニューヨークを久しぶりに訪れた廣津留さん(廣津留さん提供)

「毎年、MoMAでは『サマーガーデン』という、中庭で行われるコンサートのシリーズが開催されています。これは、MoMAが現代音楽の作曲家にサマーガーデン用の新曲を依頼して、それを演奏家たちが初演するというイベントで、私はカルテットで演奏しました。このキュレーションを行っているのがジュリアードの教授です。

 ジュリアードの先生は第一線で活躍している音楽家が多いので、学校内での練習や演奏を頑張っていると、そうやって声をかけてもらえることがあるんです。

 出来上がった新曲はサマーガーデンで初めてお披露目することになり、いうなれば世界プレミアです。私のときは世界初演を2曲、ニューヨーク初演を2曲、演奏しました。日本では、ポピュラーミュージック以外の現代音楽を若い人が楽しむ文化は少ないように感じますが、サマーガーデンは入場が無料ということもあって、若いお客さんが中心。入場の際には美術館前に長い行列ができ、みんな心から演奏を楽しんでいました。ニューヨークには日常的にいろんな音楽を楽しむ土壌があるんだと感心しました。

 サマーガーデンの曲を練習しているときに、作曲家が顔を出すこともありました。そんなとき、『バイオリンだとこのパートは難しいので、少し変えてもらえますか?』などと相談して、直接やり取りできるのも、クラシック音楽ではできないことなので本当に良い経験でした。ブラームスやチャイコフスキーにはもう聞けないですから(笑)。初演後、曲の感想をフィードバックしたりして関係を築けるのも、作曲家と演奏家が多く暮らしているニューヨークならではだと思います。

 こんな風にジュリアードに在籍してさまざまに演奏をしていると、学校やキャンパス外からも仕事の依頼が来るようになって、いつのまにか音楽で食べるようになっていた……というのが、私がプロになった経緯でしょうか」

■音楽活動の転機となった体験

 気付けばプロのバイオリニストとして活動するようになっていたという廣津留さん。ただ、現在の音楽活動の転機の一つとなっているのは、意外にもYouTubeでのバンド活動だという。

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音源を聴いて即興でセッション