そもそもマルチ商法とは、商品やサービスを購入してその組織に入った人が、次は勧誘者として知人や家族らを組織に取り込み、ピラミッド式に販売組織を拡大させていく商法のこと。
勧誘の手口はさまざまで、投資セミナーで投資話を持ちかけたり、「ここでしか手に入らない美容商品や健康食品」を購入させるなど多岐にわたる。「勧誘すればどんどんもうかる。初期投資はすぐに元が取れる」などと言葉巧みに誘導され、商品の購入やサービス利用に高額のお金を支払ってしまうのが特徴だ。
都内のある私立大学の担当者によると、近年では、「USBに入った投資の教材を買えば誰でももうけられる」と持ちかけられ、学生ローンで借金をして数十万円を支払った被害事例があった。
「一人を勧誘すると6万円の紹介料がもらえる仕組みでした。学生ローンの借金を返すために誰かを勧誘せざるを得ず、いつの間にか組織にどっぷりつかって抜け出せなくなるのです」(担当者)
手軽に金もうけをしようと欲を出してだまされたんだろう、と自業自得のように思う人もいるかもしれないが、実態はそうではない。
■意識が高い若年層に目立つ
西田教授は「マインドコントロールにより心理的に支配し、抜け出せない状況に追い込むのがマルチやマルチまがいの手口です。カルト宗教のメンバー管理にとても似ています」と解説する。
西田教授によると、カルト宗教とマルチ商法は、「集団利益の絶対優先」や、「リーダーへの絶対服従」「私生活への干渉」など、多くの共通点がある。
「彼らが示す、死後の楽園の話や、うまいもうけ話は、検証不可能な甘い幻想です。その点もまったく同じ」
実際にひっかかってしまうのは「俺はもっと稼げる」「もっと上に行きたい」「人よりいいものを持ちたい」などと、意識が高かったり、根拠のない自信やプライドがある若い人が多く、特に男性が目立つという。
その理由を西田教授はこう分析する。
「男性には、人より多く稼いだ方が自分はえらいという優越感を得られる。お金がたくさんあった方が幸せだという価値観が根付いてしまっている人が一定数います。それゆえ、自分や誰かの給料がいくら、という話をしたがる男性がいますよね。また、 心理学では 『刺激欲求』といいますが、ギャンブル的なことやハイリスクを求めたがる傾向が若い男性に目立ちます。この欲求により起業などで成功する人もいますが、マイナスに働いてしまう人も多くいるのが現実です」