78年には、練習試合で暴投、四球を連発した前年夏の準V投手・坂本佳一に「相手チームに失礼だ」という理由から、ベンチの前で土下座して謝らせたエピソードも知られている。
だが、05年に大垣日大の監督に就任してからは、鬼から仏へと変わる。
昔ながらの「オレについてこい!」の時代ではなくなったことを痛感し、現代っ子気質に合わせた「褒めて育てる」を実践するようになったのだ。
「グラウンドで怒鳴った生徒が辞めていくのは、自分の器の小ささを証明するようなもの」と、叱るときも言葉を選び、練習後には「今日も一緒に練習してくれてありがとう」と労った。
本人は「厳しさの中に温かみがあるから、鬼ではなく“オニ”です」と評している。
16年夏の甲子園では、藤代高に1回に8点を先制されながら、12対10と奇跡的な大逆転勝ち。甲子園通算37勝目を挙げた名将は「涙が噴き出るくらい感動した。一生の思い出」とすっかり“仏の顔”になりきっていた。(文・久保田龍雄)
●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」(野球文明叢書)。