なぜ暴力団になったのか、聞いてみた。
「親の出自ですよ。ただそれだけで、小さいころから何もしていないのにいじめを受けた。田舎の小さい町だったから、逃げ場がなくてね。どこへ行っても石を投げられたり蹴られたり、大声で出自をバカにされたり……。そのうち怒りに変わってきてね。多勢に無勢だから、立ち向かうには暴力しかなかった。俺は暴力でずっと生きていくんだと、子ども心に決めたんですよ」
こう話したあと、ふと笑った。
「でもね、教会で聖書を学んでいる今が人生で一番幸せなんです。人を憎んで、汚い世界で汚いことをやって、塀の中ばかりを見て生きる人生なんて、おもしろくもなんともなかった」
男性は、記者と話した後、礼拝に来ていた刑務所から出てきたばかりだという20代の男性に声をかけた。
「塀の中で壁だけ見ててもつまらないでしょ。そんな人生送っちゃだめ、幸せに生きないと」と言って彼の手を握り締めた。彼もずっとうなずき、「本当につまらなかったです。今度は、がんばります」と応じて、ハグをした。
若い彼のこの先に、どんな道があるだろうか。
「将来の被害者をなくすために、将来の加害者をなくす」
弁護士らの合言葉の意味を改めて考えてみたい。(AERA dot.編集部・國府田英之)