弁護士らには「将来の被害者をなくすために、将来の加害者をなくそう」という合言葉があるという。石塚弁護士がその意味を解説する。

「せっかくやめたのに組に戻ってしまったり半グレに走れば、将来、誰かが彼らの犯罪の被害者になります。将来の被害をなくしたいからこそ、元組員の社会復帰を進める必要がある。それが私たちの目的であり、合言葉の意味です。ただ、私たちの思いはなかなか伝わらず、暴力団に利する活動をしているかのように誤解されてしまう現実があります。決してそうではないことだけは理解してほしいと思います」

 重ねて記すが、弁護士らの支援対象は、暴力団を離脱した元組員すべてではない。暴追センターの協賛企業で働き、面談を重ねた上で選ばれた極めて限られた人たちだ。それでも、金融機関のガードは固い。

「組を離脱した人でも反社会的勢力ではないか」

「(離脱から)5年までは反社会勢力とみなす決まりがあるのだから、それより前に口座開設を求めるというのは、これまでの民暴対策を覆すということになりかねない」

「金融庁に何を言われるか分からない」

 金融機関側からは、おおむねこうした否定的な反応が目立ったという。

 もっとも、今回は警察庁が動き、金融庁も各金融機関に周知したことで、金融機関側の姿勢に変化が起こる可能性もある。

 青木弁護士は、

「この取り組みは、口座が悪用されるなどの失敗は許されません。だからこそ、支援対象者をしぼったごくごく小さなスタートになります。ただ、それでも失敗が起こる可能性もゼロではありません。もし何かがあっても、『将来の被害者をなくす』ための取り組みとして、長い目で見ていただけたらと思います。時間をかけて成功例をひとつひとつ積み重ねていき、暴力団を離脱する人が増えていけばいい。そんな理想を抱いて活動しています」と思いを話し、こう続ける。

「組を離脱して本当に真人間になれば、本来は反社会的勢力ではなくなります。この取り組みは企業において、元組員の中で取り引きを断る人物と行って良い人物を明確に区別するという意義があります。金融機関には、この点をご理解いただきたいと思っています」

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「若い元組員は働いて納税者になってほしい」