「加齢による物忘れ」と「認知症による物忘れ」の違い(一例)
「加齢による物忘れ」と「認知症による物忘れ」の違い(一例)

「症状はさまざまで、認知症の種類によっても異なりますが、行動や感情・情動の変化があり、対人関係の悪化などがみられる場合は、早めの受診が望ましいでしょう」(須貝医師)

■受診を嫌がるなら第三者の力を借りて

 認知症への関心の高まりなどから、「近年は物忘れを訴えて早めに受診する人が多い」と須貝医師。一方で、精神科への受診や認知症の検査に抵抗感を持つ人も少なくない。患者自身に自覚がない場合はとくにその傾向が強い。家族が受診をすすめる際には、自尊心を傷つけないよう工夫が必要だと、両医師は言う。

 糖尿病や高血圧などの生活習慣病がある場合は、そちらが主な受診目的のようにして「一度詳しい先生に相談してみたら」などと促すのもいい。かかりつけ医など、患者が信頼を寄せている「第三者」からすすめてもらうのも手だという。

「当院では、ご家族だけ来てもらい、どうやってご本人に受診してもらうか一緒に考えることもあります。まずはご家族だけで、かかりつけ医などに相談してもいいと思います」(須貝医師)

 自治体によっては、高齢者健診に認知機能検診を組み込んだり、物忘れ検診を実施したりするところも増えつつある。三村医師もこう話す。

「虫歯や歯周病の予防のために、歯科に定期検診に行くのは一般的です。同じように、からだのチェックアップの一環として脳の検査をしに行くことが、一般的になっていくことを期待します」

 検査の結果、認知症に似た別の病気が見つかることもある。また、認知症の前段階やごく早期に生活療法に取り組むと、症状が軽くなったり、認知症状態を脱したりすることがあるという。これからさらに早期発見が重要になっていく。

(文・出村真理子)

※週刊朝日2022年9月2日号より

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