DJが自分の手元でマイクのオンオフの切り替えをするためのスイッチ、「カフ」。英語では[cough button]。つまり、DJがcough、咳をする時に、オンエアに乗らないように一時的にオフするためのもの(写真:著者提供)
DJが自分の手元でマイクのオンオフの切り替えをするためのスイッチ、「カフ」。英語では[cough button]。つまり、DJがcough、咳をする時に、オンエアに乗らないように一時的にオフするためのもの(写真:著者提供)

 これが案外、難しい。悪気なく相手の話を中断してしまうことがあります。ひと通り状況がわかったと思うと、つい、「自分にも同じ経験があって……」と話し始めてしまったり、そこまでの話をもとに勇み足で的外れなアドバイスをしてしまったり。相手の本当の悩みは、今話していることの先にあるかもしれないし、さらに枝分かれしているかもしれません。

 そこで、誰かから相談を受けたとき、話を打ち明けられたとき、ラジオDJがリスナーからお悩み相談を受けている、という設定に自分を置いてみるのはどうでしょう。

 リスナーお悩み相談では、DJは、まずメールを読みます。その際に大事なのは、最後まで読みきること。つまり、そうやってまずは相手の悩みを最後まで聞ききっているわけです。そして、ただ「聞く」だけじゃなく、スーさんのように「なるほど、しっかり受け止めました」と言葉で表すこと。

■アドバイスにまっしぐらだった過去の私

「やりがちだから気をつけて」という例を私の過去の失敗でお話ししますね。

 新年度の時期になれば、ラジオ番組には、「新しい環境で友人ができるか心配です」というお悩みが増えます。駆け出しの頃の私は、「よっしゃ、まかせとき!」とばかりに、「心配しなくて大丈夫! 例えば、こんなふうに話しかけてみたら?」と、会話フレーズ例などを紹介していました。「ふぅ、今日も一件落着」なんて思っていたのですが、あるときディレクターにこのように指摘されました。

「それも役立つかもしれないけど、まずはお悩みを一緒に感じるだけでも、相談者さんはうれしく思うんじゃないかな。何かアドバイスするのは、それからのほうが受け入れやすいのでは?」

 これにはハッとしました。

「秀島さんなら、どうしますか?」
「アドバイスがあれば、お願いします!」

 と、お悩みメールの最後には、たいていこんな言葉があります。だからといって、すぐアドバイスに走りません。

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前のめりになるのではなく、まず…