3月30日のDeNA戦(横浜)まで4試合すべてに五番バッターとして出場し、17打数5安打(打率.294)、1打点。その時点で両リーグ1000安打に残り50本とするなど、新天地での船出は順調に見えた。ところがその翌日、新型コロナウイルス陽性判定を受けた選手の濃厚接触者として特定され、チームから離脱。結果的に、これが内川にとっての分岐点となる。

 4月14日にファームで実戦に復帰し、その2日後の阪神戦(甲子園)に7番・一塁で出場するもノーヒットに終わると、ほどなくして今度は上半身の張りで離脱。5月に一軍に戻った時には、ファーストは4月下旬から合流したオスナの定位置になっていて、内川には新たに「右の代打」の役割が与えられた。

 しかし、長年にわたってレギュラーを張ってきた選手にとっては、1打席で結果を残すのは容易なことではなかった。7月9日の広島戦(神宮)で打った自身5年ぶり通算6本目のサヨナラ打(犠飛を含む)が、代打としてはこの年の唯一の見せ場だった。

 ヤクルトで2年目の今シーズンは、開幕二軍スタート。イースタン・リーグでは5月下旬に打率を3割に乗せると、その後は一貫してハイアベレージをキープするも、快調に首位を走る一軍から声はかからない。いわばソフトバンクでの最後のシーズンと同じような状況にあっても、打撃のみならず守備でも走塁でも手を抜かず、練習にも真摯に取り組む姿は、若手にとって良いお手本になっていたという。

 今季、初めて一軍に昇格したのは、高津監督をはじめキャプテンの山田哲人、リードオフマンの塩見泰隆、正捕手の中村悠平ら、レギュラーの多くが新型コロナウイルス陽性判定を受けた直後の7月12日。14日の中日戦(バンテリンドーム)で7年ぶりにレフトで先発出場すると、第1打席で内川らしい右打ちのツーベースを放つなど、7月20日の巨人戦(神宮)までスタメン出場した5試合中、4試合で安打を記録した。

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