もう1人、投手で面白い存在になりそうなのが阪神を自由契約となったガンケルだ。メジャーでの実績はないものの、来日2年目の昨年は20試合に先発して9勝3敗、防御率2.95と活躍。今年は夏場に腰を痛めた影響で8月以降は登板がなく、5勝5敗と成績を落としたものの、春先は安定した投球を見せており、防御率も2点台をマークしている。優勝したヤクルトに対しては2年連続で防御率1点台と相性が良いというのも、巨人にとっては追い風である。体調面はしっかり調査する必要はありそうだが、今年で31歳と年齢的にもまだ若く、来日1年目はリリーフとしても結果を残しているだけに、それほど高額な年俸が必要でなければ、獲得することによるプラス面は大きいはずだ。

 外国人以外の投手でもう1人獲得を検討しても面白そうなのが、昨年までオリックスでプレーしていた吉田一将(新潟アルビレックスBC)だ。今年はBCリーグの新潟で抑えに定着。36試合に登板して防御率こそ2.48ながら、自責点を許したのはわずか6試合と抜群の安定感を見せている。

 さらに成績を細かく見ていくと、36回1/3を投げて50奪三振、与四死球はわずかに5、1イニングあたりの被安打と与四球で算出するWHIPも0.85とどの数字も圧倒的なことがよく分かる。オリックス時代もその高い制球力には定評があり、短いイニングであればストレートの勢いも申し分ない。リリーフとしての経験は豊富なだけに、まだまだ戦力となる可能性は十分にあるだろう。

 ここ数年にFAで獲得した選手を振り返ってみても期待通りの活躍を見せたのは丸佳浩だけで、費用対効果は良いとは言えない。ヤクルトが再生工場で成功していることを考えても、違う形での補強も検討すべきではないだろうか。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文 1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

著者プロフィールを見る
西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

西尾典文の記事一覧はこちら